フィリピンにいる日本人の長期滞在者は1万4千人、2007年のフィリピン日本人旅行者は42万人に上ります。日本の企業は550社が進出していますので、現地企業の管理職といった方も多いでしょうが、その一方で、明らかにフィリピンの滞在者にはある傾向が見られます。すぐに思い起こされるのは、1980年代の興行ビザに伴う歌手やダンサーなどのエンターティナーの来日との関係です。興行ビザで6ヶ月間日本に滞在できたのですが、実際はその多くがキャバレーなどの接客業で働き、その後日本中にフィリピンパブが開店し、当時は年間8万人のフィリピン女性が来日していました。ところが2004年アメリカの国務省が「人身売買報告書」の中でこうした海外の若い女性の受け入れに関し、日本を「人身売買容認国」と名指ししたため、慌てた日本政府は即座に興行ビザを廃止します。結果として国内のフィリピンパブはほとんどが閉店に追い込まれます。この報告書で連想されるのは日本の暴力団関係者ですが、1980年代に日本の興行ビザの発行の際に現地のフィリピンでプロモーターとして多くの女性タレントを育て、日本に送る際にその契約金で潤っていたようです。こうした日本人に限らなくても、一攫千金の不動産投資事業に邁進しているアメリカ人、オーストラリア人、韓国人、中華系のマレーシア人など何処となくヤマっ気が多いように思います。日本の個人の方でも、妙に商売っ気があり、フィリピン関係のホームページを検索してみても、ビジネスに慣れた手際の良さを感じます。
このアメリカの報告書に関して、確かにフィリピンパブはアメリカの国内では見られませんが、皆さんもご存知のアジアに見られるゴーゴーバーは明らかにアメリカ軍関係者のための施設です。また、沖縄を例に出すまでもなく、こうしたアジアの国々でアメリカ軍による暴行事件が後を絶ちません。現地の警察が逮捕しても「米軍特権の地位協定」を元にアメリカ軍に引き渡す他になく、現地の記録に残らないようになっています。基地周辺には多くの年金で暮らすアメリカの退役軍人とゴーゴーバーを経営するオーストラリア人が住み着いていますが、このオーストラリア人にしても1970年代までは白豪主義と呼ばれるアジア人を差別する移民政策を取っていましたし、老いたアメリカ人の多くが未だに人種的偏見を拭い去ることができていません。当然、アジアの女性のオークション会場と呼べるようなこのゴーゴーバーはアメリカにもオーストラリアにも有りません。
とにかく、こうした投資家を引きつけるフィリピン社会はそれだけビジネスの環境が整っていると言うこともできますが、悪く言えばお金があれば何でも出来てしまうとも言えますし、それなりのノウハウを持ち合わせていないと彼らと渡り合うことは厳しいだろうと想像します。もし腰を据えてやる覚悟があれば、サリサリストアーに代表されるモンキービジネスと言われる社会の底辺で商売などをしながら、この社会を学ぶのも面白いでしょう。意外なところでは、これだけ事業に慣れた世界の投資家が集まりながら、ユースホステルなどの公共施設は大変に貧弱なので、そういう施設の運営も可能です。ビジネスに興味がない方でも、アメリカにいてもアメリカ社会の実態はなかなか見えてこないように、フィリピンから日本やアメリカを眺めて見ることはあなたにとっても大変に意義あることと思います。