先にフィリピンがスペイン人及び中国人との混血の割合が9割に達することをお話しいたしましたが、そんな中で一握りの人間がフィリピンの広大な土地を支配しています。これはラテン・アメリカなどとも共通していて、こうした支配層は現在でもスペイン人の純血といったものに強いこだわりを持ち、また、社会もよりスペイン人の血統が強い者が優遇される傾向を持っています。このような社会の典型としてプランテーション農業が挙げられ、地主たちは小作人を使って、常に外貨を稼げる輸出できる商品作物を作らせ、国内は主食の米を輸入しているために価格が高騰し、常に飢餓状態を招いています。
こうしたスペイン系で有名な財閥にはアヤラ財閥などがありますが、フィリピンの経済界の特殊性として多くの中華系が支配しています。ロビンソングルーブはゴコンウェイ財閥、SMデパートのシー財閥、サンミゲールビールのコファンコ財閥などです。ラテン・アメリカ諸国と比べても、こうした特殊な財閥を除いたら、フィリピンは市民生活の上では人種を差別しない社会です。またそもそも純血にこだわるのは一部の財閥出身者のみで、むしろアジアの中でも最も他民族と交わることに抵抗がない社会だと言えるでしょう。一方こうした経済界の特徴としては財閥同士が相互に緊密に繋がっていることが指摘され、こういった社交の場としてロビイストが活躍するのはアメリカ社会と同様です。
ところでラテン・アメリカ諸国でアメリカが直接植民地支配していないにも関わらずアメリカが忌み嫌われているのも、こうしたプランテーション農業を支えているのがアメリカの資本だと考えられているからです。フィリピンではこのようなアメリカに対する憎悪といったものは南部のミンダナオ島を除いては表面化しておりませんが、実際の政治でもアメリカの支配を指摘する者は少なくありません。先のマッカーサー司令官がフィリピンに莫大な資産を築いていたことを例に挙げなくても、最近のマルコス大統領の回収できた不正な蓄財が850億円にも上ることなどから、政治がアメリカ資本の影響を受けていることは否定できません。また同じ時期に日本の田中角栄がロッキード事件で有罪になるなど日本もまた例外ではありません。またこの一連の裁判に於いて日本でもフィリピンでもアメリカ本国へ捜査が及ぶ時点で共に謎の死亡者が出るなどして解明に至っていないことも共通しています。こうしたアメリカの政財界による間接支配の実態は、一般の私たちでは把握できないのが現状です。また、当のアメリカの農業は世界の主要穀物の商品化に成功しており、小麦とトウモロコシが共に世界第一位、米が世界第三位の輸出大国となっていて、日本の農業が「減反」など補助金で農家を縛り、もはや国民の税金で支えなければ存続さえ難しくなっている現状と対照的です。日本の政治は既にグローバル企業の金融システムの中に組み入れられていて、今後は食料さえもアメリカに依存して行かざるを得ません。